夢の先へ

 二十代も半ばに差し掛かろうとしていて、気づけば人生の半分以上をオタクとして過ごしてきた。アニメ、漫画、ゲーム、歌い手、実況、舞台、声優、俳優…どの界隈も楽しかったし、たくさんの経験をした。そしてその経験を積み重ねた結果「自分はもしかしたらジャニオタに向いているのかもしれない」ということに気がついたのは、数年前のこと。そして、その瞬間から私の口癖は「ジャニオタになりたい」になった。

 

 これはもう個人の性格とかおたくとしての方向性(?)にもよるので一概には言えないんだけど、自分に関してだけ言えば根本的にめちゃくちゃジャニオタ気質だ。

現場はそりゃ好きだけど、超頻繁に推しに会いたいタイプではなく、接触が好きなわけでもなく、認知が欲しいわけでもない。程よい距離どころか、本当は少し遠いぐらいが良い。ぶっちゃけ遠征もあまりしたくないし、テレビで推しを見たい。茶の間万歳。どの界隈にいても好きな人には結局歌って踊る仕事をして欲しくて、いつだってライブ現場が一番楽しかった。新曲が出れば作詞家と作曲家を調べて大盛り上がりするタイプの楽曲厨だし、活字中毒なので雑誌やインタビューを読むのも苦じゃない。「個人戦」とまで言われている俳優や声優を応援していた時ですら、関係性萌え、コンビ萌え、グループ厨な傾向があって………

 


いや、ジャニオタしろよ。

 


 ピューロランドのショーで号泣、桜が吹雪けば号泣、最近はもうレーザー演出を見ただけで涙出る。あとピアノのイントロでも即泣けます(これは殆どもふ虎のせい)。とにかくエモーショナルを浴びたい。エンターテイメントを浴びたい。キラキラ輝くアイドルを、人生で一度でいいから好きになってみたい。歳を重ねるにつれてその思考が強まって……脳が……脳がエンタメを……トンチキを求めている……ああもう早くジャニオタになりたい………以下、ループ。

 


 家族や友人含め、周囲にはそこそこジャニオタがいたので、地元での公演があるたびに色んなグループのコンサートに連れて行ってもらっていた。どの公演もびっくりするぐらい楽しくて、終演後はいつも「あのステージに自分が一番好きな人がいたら、どんなに楽しいんだろう」って思っていた。端的に言ってしまえば羨ましいという気持ちが大きかった。どれだけ願っても望んでも、その時応援していた人たちは夢物語もPERFECTもMUCHU恋もHappinessもやってくれないし、ジャニレベルの楽曲や衣装、演出などは到底期待できなかった。当時はそれで全然良かったし、勿論比べるものでもないけど、「いいなぁ」って心の何処かでずっと思っていた。

 ジャニオタになろうと思ってなれるものでもなく、作ろうと思って自担ができるわけでもない。本命は別界隈にいながら、ジャニーズも嗜む日々を気づけば5年ほど続けていた。いつか自分にも担当というものができる日をひっそりと夢見て。


 そして、その日は突然訪れた。


 2019年12月18日。HDDに残っていたMステの録画をジャニオタの身内と見ていた。その回はSnow Manが初めて単独出演をした回だった。周りにジュニアのオタクもいてそれなりに話も聞いてたけど、スノに関しては正直全くの無知だった。なんとなく舞台をよくやってるイメージはあったけど…今となってはどんな認識だったかよく思い出せない…。自分が嵐とKAT-TUNのコンサートによく足を運んでいたのもあって、宇宙sixのことは知っていた。なので、目黒くんが加入したグループ、という認識は…あったはず…(何もかもがうろ覚え)。

「デビュー曲かっこいいよね」

 なんて他人事のように言っていたし、この時までは確かに他人事だった。

 曲が始まって「これってHIKARIさんが作曲なんだ〜それは最高だわ」とか「大人数のフォーメーションってすごいんだね〜」とか。そんな取り留めのないことをべらべらと喋っていた。

 そして、サビが終わった直後、綺麗な高音を歌い上げる一人が、画面に大きく映った。

 

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

 


「待っ………え…!?………!?……………ねえ!!!この人誰?!?!?!?!」

 

 

 

 オタクの長年の夢が叶った瞬間です(狂ったように「この人誰!?」を繰り返す私)(隣で引くほど笑い転げている身内)(早く名前を教えろ)

 


 いや、いやいやいや、なんで、なんで誰も渡辺翔太のこと教えてくれなかったの!?こんなに顔がよくて歌が上手い子がいるって、なんで私はずっと気づかなかったの!?

 理由はすぐに判明する。確かに周りにジュニア担はちらほらいたけど、スノ担がいなかった。今まで入ったコンサートに一回もスノがついてない。Jrにハマったら大変そうだ…と思って若干避けていたのと、先述した自分のオタク傾向とJrの相性が悪すぎる点もある。少クラとかあんま真面目に見ないようにしてたし。いや、少クラは見とこうよ。そりゃ全然知らないわ。でもその「全然知らない」という点と「デビュー組になる」という点が完全に功を成した。成してしまった。自分の意思で、時間をかけて、渡辺くんのことを、グループのことを、狂ったように調べ漁った。その瞬間からもうハマったも同然だった。

 

 そこからは物凄い速度でSnow Manに転がり落ちた。当時は声優や二次元のオタクをしていて、なんならこの前日まで推しの朗読劇のために東京遠征までしていて心身ともにヘトヘトだったが、Mステを何度かリピったあとは自室にこもって明け方まで動画を漁り、結局は4〜5日ぐらいでYouTubeにある動画を全て見た。今応援してる界隈との掛け持ちとか、そんなことを考える暇もないぐらい、頭の中はSnow Manと渡辺くんでいっぱいになった。新規ハイってこわいね。

 歴史が長いグループということもあって調べても調べても終わりがない。古参の方々には本当に頭が上がらない。家にあった過去の雑誌や録画を漁りまくり、年末年始もテレビに張り付き、初めてジャニーズのFCに自分の意思で入った。初めてジャニーズのCDを買った。もう一生自担はできないだろうなって半ば諦めてたから、一から学ぶジャニーズはあまりにも楽しすぎた。口癖が「ジャニオタになりたい」から「ジャニーズ最高すぎ」に変わった。

 余談だけど、周囲のジャニオタになぜ私にスノを教えてくれなかったのかと問い質せば全員が「お前はスノじゃないと思ってた…」とのこと。なんでだよ。

 


 そんなこんなで、気付けばSnow Manのファンになって100日が経っていた。

 


 たった100日の間に、デビュー日を迎え、ハイタッチ会が中止になり、コンサートが決まり、当落があり、コンサートが中止になり、レギュラー番組が決まり、新曲も3曲ぐらい決まり……なんか……めちゃくちゃ激動だったな……。ジャニーズのデビュー年ってどこもこんな感じなんですかね?(じゃにおたいちねんせい)


 正直、今までいた別の界隈でもヘビーな体験をしてきたので、オタク経験値としてはまあまあ高めな方だと自負している。ちょっとやそっとじゃ折れてやんないからなっていう謎の強気。人間、色々あって当然。保険でもなんでもなく、それなりに覚悟もしている。生きて、アイドルをやってくれているだけで、奇跡だと判っているつもりだ。

 それに、彼らは独りじゃない。グループってやっぱり最強だと思う。

 ステージの上で光り輝く9人の笑顔を生で見てみたい、なんて、今は願うことしかできないけど、この夢もいつか絶対叶うって信じてる。

 渡辺くんが14年という長い期間、腐らず、諦めず、頑張ってくれたおかげで、私の夢は叶ったのだから。